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事業用地

kazuhikokazama

プロジェクトファイナンスにおける土地の利用権や事業用地に係る関連法規制等を整理した文献はいくつも存在しますので、今回は弊社が実際に直面した事業用地に係る論点をご参考までにご紹介したいと思います。


当たり前ではありますが、事業を遂行する為には土地の確保が必須ですが、思わぬ「落とし穴」もあります。「プロファイあるある」ということで、以下が過去の事例です。



~筆界未定地~

日本国内(特に地方の山村地域)には、隣接地との境界が確定していない「筆界未定地」が存在します。特に太陽光発電や陸上風力発電は地方の山村地域に立地することが多く、筆界未定の問題に直面することが多いかもしれません。


隣接地の土地所有者から権利を主張される可能性があり、この点が問題になるわけです。特にプロジェクトファイナンスの場合は、レンダーは事業リスクにダイレクトに向き合うことになるので、筆界未定地での事業にプロジェクトファイナンスを供与することは難しいでしょう。弊社にご相談を頂いた過去の案件でも、「筆界未定地」の案件についてはプロジェクトファイナンスによる資金調達は実現していません。


ただし、隣接地との境界問題は過去何十年も発生していないことから、事業者(スポンサー企業)が当該リスクを負って、自らの資金(含むコーポレートファイナンスでの資金調達)で事業を実現したケースはあります。レンダーが取れないリスクであっても、事業者自身は取りえるリスクと判断した結果です。


別案件の例ですが、当該筆は広大な面積を有しており、北側の部分は筆界が確定しており、その筆界が確定している部分で事業を実施、筆界未定の南部は事業実施場所からはるか離れた場所なので、隣接地の土地所有者との間で問題になる可能性は低いという整理ができて、プロジェクトファイナンスが実現したケースがありました。


~共有地~

「共有地」とは、複数の所有者に共有されている土地のことです。この共有地には名称がついていることがあるので(例えば「●●区」等)、この「●●区」と事業者との間で土地利用の契約を締結すれば良いと思いがちですが、「●●区」はいわゆる「権利能力なき社団」であり、法人格を有していない為、権利の主体になれない=契約当事者になれません。自治会やサークルに名前がついていたとしても、その自治会やサークルが権利の主体になれないのと同じです。「●●区」が認可地縁団体となって法人格を得るというのが解決方法ですが、そうでないケースも多いです。従い、共有者全員との間で合意して契約を締結する必要がありますが、共有者の一部の方が既に死亡している、相続がなされてないということケースが問題です。


弊社が担当した過去の案件案件では、事業者側の弁護士や司法書士のサポートを得て、次のような対応になりました。

・ スポンサー企業が(以下の1名を除く)共有者全員から土地を買い取り、事業主体とスポンサー企業との間で土地賃貸借契約を締結。

・ ただし、共有者の内の1名は、既に亡くなられており且つ相続手続きもなされておらず、相続人は(なんと)100名近くになること(加えて相続人の一部は海外に移住している)が判明。事実上、相続人全員から同意を得るのは困難。

・ 尚、賃借権の登記は、共有物の「変更」に該当して、(共有者の)全員の同意が必要との民法の規定もあり、実際に法務局に問い合わせた結果としても今回のケースでは登記はできない旨の回答。

・ 事業者が有する賃借権を登記できない(賃借権に対抗要件を具備できない)こと、更には登記された賃借権に担保設定ができないことをレンダーは懸念。

・ 相続人から権利を主張されたり、賃借権が登記できないことに起因して、レンダーに損害を発生した場合は、スポンサー企業がレンダーの損害を補償する。


最後の「レンダーに損害を発生した場合は、スポンサー企業がレンダーの損害を補償」という、いわゆるスポンサーサポートを導入したリミティッドリコース型のプロジェクトファイナンスにしたというのが上記の案件のポイントです。本来、スポンサー企業はノンリコース型のプロジェクトファイナンスを志向するわけですが、当該リスクは取ることができる(理屈上のリスクはあるが、当該リスクが顕在化する蓋然性は極めて低い)というスポンサー企業の判断があったから、このような整理ができたわけです。レンダーからは、ノンリコースを維持する為に別のアイディアもでてきましたが、そのスキームを維持する為の手間とコストがかかることから(当該リスクのコンティンジェンシーとしてのリザーブも徴求されました)、スポンサーサポートという整理で決着した経緯です。


~補足・・・屋上に設置する場合~

太陽光発電を建物の屋上に設置する案件も今後益々増えてくるでしょう。ただし、屋上部分にのみ賃借権を登記することはできない旨を弁護士から聞いていますので、色んな工夫が必要になってくると思います。弊社は、屋根置き太陽光発電向けファイナンスを担当したことがありませんので、今後の課題としたいと思います。


有限会社プロジェクト・ソフィア&コンサルティング

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